今回は、日本ではなかなか見えにくい「中国から見た高市早苗首相」に関する報道と、

私が実際に中国で暮らしている中で感じた“リアルな空気感”について

お話したいと思います。

政治的な話題ではありますが、私自身の現地体験に基づいた情報をもとに、

中国に興味を持つ日本人、また日本に興味を持つ中国人の皆さんにとって

少しでも役立つ情報になれば嬉しいです。

中国メディアの報道は「高市」呼び捨て、否定的な意見だけを集めた構成

高市早苗首相の誕生は日本では大きな話題となりましたが、

中国の報道のされ方は一味違います。

私が驚いたのは、多くの中国メディアが「高市」と呼び捨てにしている点。

もちろん中国語ではよく名前だけで呼ぶこともありますが、

それでも各国の首脳に対して「〇〇首相」や「〇〇総統」など敬称をつけるのが通例です。

それがこと高市首相に関しては、敬称抜きで報道される記事が目立ちます。

内容も、中国や各国での高市首相への批判的デモや反発の声ばかりを集めて構成されたもので、

明らかにネガティブな印象操作が感じられました。

特に「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」といった発言に対して、

「日本が中国の内政に干渉している」

「戦争を煽る姿勢だ」

など、中国国内での反発は大きく取り上げられています。

しかし、そうした報道があまりに一方的であり、日本側の文脈や意図を伝える報道は、

ほぼ皆無です。

誤解が生む中国国民の「日本観」:実際とのギャップ

このような偏った報道の影響か、私の周りでも中国人の友人から以下のような言葉を

よく耳にするようになりました。

「日本の観光業は、中国人が行かなくなって大打撃なんでしょ?」

→ 確かに以前より中国人観光客は減っていますが、その分日本人国内旅行客や、

東南アジア、欧米など他国からの観光客が増えており、観光業全体としては

回復傾向にあります。

「高市首相のせいで、日本の米が1kgで50元(約1100円)まで上がったらしい」

→ これも誤解。実際、日本の米価はここ数年すでに高止まりしており、

高市首相の就任とはほとんど関係がありません。

「日本人はみんな高市首相を嫌っているんでしょ?」

→ 日本は言論の自由があり、首相に対する賛否の意見は両方あります。

しかし現実として、高市首相は一定の支持層を持ち、初の女性首相として

期待されている部分も大きいです。

こうした認識のズレを見ると、中国国内の報道がどれだけ限定的な情報だけを

伝えているかを感じざるを得ません。

「テレビに鳩山元首相が出てきた」現地でよくある一幕

ある日、中国人の知人と高市首相の話題をしていたところ、

「でも日本にも中国の味方をしてくれる政治家もいるよね?昨日テレビに鳩山さんが出てたよ」

という話になりました。

そう、中国では鳩山由紀夫元首相が頻繁にテレビ出演しています。

彼は中国寄りの発言で知られており、現地メディアにとっては

“都合の良い日本の声”として使われやすい存在です。

私は、

「彼は確かに元首相ですが、日本国内では必ずしも支持されているわけではありませんよ」

と説明すると、知人はやや驚いた様子でした。

中国では「どの元首相も同じくらい影響力がある」と思っている人も多いので、

「日本では政治家の人気や支持率は千差万別。元首相でも評価は人によります」

という話をすると、初めて腑に落ちるようです。

高市発言後の影響:日本アニメ映画の上映状況

中国国内では、「台湾有事」発言の後、日本のアニメ映画の上映に変化が見られました。

例えば「クレヨンしんちゃん」シリーズの新作や、ジブリ作品などの上映が

中止または禁止されたという噂も広まりました。

実際に、人気作品である『鬼滅の刃』の新作は例外的に公開され、

興行収入は6億7500万元(約150億円)

と、2025年の外国映画で第1位となるほどの大ヒットを記録。

にもかかわらず、通常であればヒット作は上映期間延長が行われるところ、

今回は延長されていません。

おそらく「今は日本映画を大々的に推す時期ではない」という政治的な判断が

あったのでしょう。

こうしたところにも、報道規制や文化政策における「政治との距離感」が感じられます。

それでも現地は「平常運転」:反日感情の実感はなし

これだけ中国メディアで連日のように否定的な報道が流れているにも関わらず、

実際の現地生活では大きな変化はありません。

私が現在代表を務める「シンセン日中交流会」の最近の飲み会には50名以上が参加。

中国人と日本人の混在したグループで、とても和やかな雰囲気でした。

また、グループ内では

「今度、北海道旅行に行くんです!」

と目を輝かせて話してくれる中国人の方も何人もいます。

つまり、中国人の中でも“報道の内容”と“実際の感情”は必ずしも一致していません。

反日感情は抑えられている?過去との比較

ちなみに私が中国で暮らす中で最も緊張感を覚えたのは、

2012年の「尖閣諸島の国有化」発表のとき。

あのときはここシンセンでも数万人規模のデモが発生し、気を付けた方がいいかも?と思いました。

(結局身の危険を感じるような経験は一度もありませんでしたが。。。)

しかし、今回の高市首相の発言を巡る騒動では、少なくとも現時点でそういった

“実力行使”のような反日デモは一切確認されていません。

むしろ多くの中国人は報道を見て、

「ああ、そういう発言があったんだ」

くらいの軽い反応で、過剰な敵意を持っている人はごく一部に限られている印象です。

日本人として気をつけたいこと

在中日本人として、今のような緊張が高まっている時期に私たちができることは何か?

それは、「過剰に反応しない」ことと「冷静な行動」です。

SNSなどでは過激な言論が目立ちやすくなっていますが、

実際の中国社会はそこまで一枚岩ではありません。

また、

日本に住んでいる中国人の方々に対しても、

偏った情報に振り回されず、冷静に接する

という意識を日本側にもぜひ持っていただきたいと思います。

まとめ:情報を見極める力を、私たち一人ひとりが

今回の「高市首相と台湾有事」に関する中国での報道を通じて、改めて感じたことは、

「情報を受け取る側のリテラシーがますます大切になっている」

ということです。

日本も中国も、自国に都合の良い情報を発信しがちですが、

だからこそ私たち一人ひとりが現地の実態を見聞きし、冷静に判断する必要があります。

中国に25年暮らしてきた私の実感としては、報道ほど極端な反日感情はなく、

多くの人は日本に興味を持ち、旅行や文化に親しみを感じています。

引き続き、そうした「現場のリアル」を、これからも発信していきたいと思います。

おまけ(Merry Christmas & Happy New Year !)

いろいろと日中関係はもめている今日この頃ですが、

旧正月を重んじるここ中国にて、季節感のないクリスマスと元旦が近づいています。

我が家は、大晦日が結婚記念日なので、下手に外に遊びに行くわけにもいかないし。。。

かといって大晦日に夜にビデオチャットつないでも、

”もう寝る~”とか言われることもあるし、

今年の年末はどうなることやら。。。

Merry Christmas & Happy New Year !

みなさまが、楽しいクリスマスと年越しを送れますように。